三種類の痛み
侵害受容性疼痛(しんがいじゅようせい とうつう)
指を切ったり、予防注射を受けたり、おなかやのどや歯が痛んだりという経験は誰もがよくするので、痛みというとこうした時の経験が思い浮かびますが、実はこれらのほとんどは、アンテナが刺激されておきる侵害受容性疼痛と呼ばれるものです。
治療は原因がとれるものならその除去、または自然な組織の修復です。何らかのからだの組織の炎症(赤くはれて熱を持つ)が原因となることが多く、安静にする、冷やす、消炎鎮痛薬(いわゆる痛み止め)を使用する、化膿性のものなら抗生物質を使う、外科的に対処するなどです。またおなかの痛みが胃腸などの強い収縮運動で起きているときには、胃腸の収縮をおさえる薬(おなかの痛み止め)を使うこともあります。
こうした痛みは、急に起こってくる事が多く、まず原因に対する適切な診断が重要です。また通常は原因に対する適切な治療で痛みも軽快してくるのが普通です。
がんの転移や再発などで、原因がわかっていても取れないときは、痛みの程度に応じて消炎鎮痛薬のほかにモルヒネなどを使います。この種の痛みにはモルヒネはよく効くことが多いのです。
また痛みが強く、原因の診断がついているときは、神経ブロックによる痛みの管理をすることもあります(手術直後の数日間、がんの痛みなど)。
神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせい とうつう)
アンテナから大脳までの神経のケーブルが傷害されたり、変調したりしておきる痛みです。侵害受容性疼痛に較べて治療が難しく長引くことがめずらしくありません。
正座をしてシビレがきれたときのようなじんじん、チカチカしびれるような痛みをはじめ、さまざまな表現がされる特殊な痛みになります。また障害を受けている部位と痛みを感じる部位が離れていることもあります。
帯状疱疹(ヘルペス)の後に残ることのある神経痛、けがや手術で神経を傷つけたあとに起きてくる神経痛、三叉神経痛、がんの神経への圧迫、浸潤などでおきてくる痛みなどがあります。
こうした痛みは原因となった最初の障害からかなり長期間たっても続いたり、よけいひどくなったりすることがあります。
一般に消炎鎮痛薬やモルヒネなどが効きにくく、鎮痛補助薬といれるような薬が有効なことがあります。鎮痛補助薬としては抗うつ薬、抗けいれん薬、抗不整脈薬などがあります。
また神経ブロック治療がよく使われます。
心因性疼痛(しんいんせい とうつう)
身体に異常が見あたらない痛みで、アンテナからケーブルを伝わる痛みの刺激と関係しない痛みの訴えがみられます。
治療は薬剤をふくめた精神心理療法になります。